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庭作り

石積みのある庭

石積みのある庭

■基本コンセプト

 お施主様は、ご夫婦で大変なお庭好きで、植物についてもとても詳しく、またとても勉強熱心な方です。初めから、お庭のイメージについてはかなり明確なご希望をお持ちでしたので、そのご希望と設計を摺り合わせていく作業が重要なものになりました。
 最初から決まっていたのは、以下の項目です。

・車2台分駐車場を拡張する(庭の面積を削る)
・明るい和風(モダン和風)の庭
・山の中の雑木林のイメージ
・作り込みすぎない、前からそこにあったようなさりげないお庭
・道路との境界に柵や生垣は設置しない
・既存樹、既存の庭石は一部を除いてすべて再利用
・土壌の入れ替えと改良

 駐車場2台分を確保するためには、道路に沿って庭を削るのが最適だろうということは、当初からお施主様とも一致していたのですが、このお庭は、道路から70cmほど敷地が上げてありました。
 土留めにコンクリ擁壁や既成のリブブロックを使うと、どうしても味気なくなってしまいます。駐車場と庭との馴染みをよくすることと、庭全体の質感を確保するために、道路との境界の土留めに自然石を用いる野面(のづら)石積みを提案させていただきました。
 この提案は、お施主様にも大変気に入っていただいたため、これを核として全体の設計を考えていきました。


■設計図

設計図図面を作る過程で、

・アプローチ階段部分は小端積みにする
・階段脇には草花や中木が植えられる程度の植栽帯を設ける
・リビングから園路へのショートカットを飛び石で設置する
・景石の配石は、存在感を主張しない自然な感じに

など、様々なご要望をいただき、図面に反映していきました。


施工前後

■石組み

施工中 施工中
 石組み施工中  石組み
施工中 施工後
石組み 施工後(逆方向から)


  もともと現場には、大小合わせて10個の鳥海石がありました。
中でも最大のものは、高さが2m、幅も1.5m、重量も8t以上あると思われるサイズだったのですが、庭の広さに対して石が大きすぎ、圧迫感を与えていました。
石の形を見ても寝かせた方が素材が活きそうでしたし、お施主様も、「いかにも石組み」というのではなく、山中にある露頭岩のようなイメージをご希望されていたので、地中に深く埋め、自然に見えるようにしました。

 

■階段・アプローチ

施工前 施工後
階段 階段(施工後)
   
 階段 階段(施工後)
  施工後(お施主様撮影)
  施工後

  今回のお庭では全体的に「さりげない造作」がポイントの一つだったのですが、入口の一番目立つ階段だけは、しっかりしたものをというお施主様のご希望をいただきました。
中でも「小端(こば)積み」という平らな石を層状に積み上げていくタイプの石積みをご希望いただきました。
この近辺では、小端積みに適した石は産出しないので、長野で産出する「小諸石(こもろいし)」を石屋さんに取り寄せてもらい、施工しました。
小諸石は雨に濡れるとしっとりとピンク色がかり、玄関先を明るく仕上げることができました。
また、入口の質感を確保するためと、駐車場と階段の馴染みをよくするため、階段下の部分も同じ小諸石を使って石張りにしました。

 

■園路

施工前 施工後
石積みのある庭 石積みのある庭
   
 石組み施工中  施工後(逆方向から)


駐車場拡張のため、庭の端は現状より3m 家側に近づくことになります。
直線の入口だと、庭の奥行きが出しにくいため、園路をゆるやかにカーブさせることにしました。
同時に山中の小径のイメージを出すことも意識しております。
ただ、あまりカーブを強くすると動線が不自然になってしまい、使いにくくなることが考えられましたので、あくまでゆるやかに、周りの庭にふっと目がいくような曲がりを狙いました。
園路のカーブにあわせて、階段部分も家に対して正面ではなく、少し角度をつけてあります。

 園路は、真砂土舗装に、模様づけで、階段に使用した小諸石と、石積み・飛び石に使用した新筑波石を入れてあります。
園路の模様は、全面石張りにすると固い感じになりますし、かといって真砂土舗装のみだとラフな感じになりすぎるように思ったので、階段を昇りきったところと玄関直前のみ石張り風にし、残りは模様程度に石を入れました。
意匠になると同時に、階段、飛び石との連続性を持たせることも考慮しました。

 

■飛び石

施工前 施工後
  (お施主様撮影) 
 飛び石  施工後(逆方向から)

 リビングから園路へ向かうショートカット通路として飛び石を打ちました。
  使っている石は、石積みと同じ新筑波石です。
歩きやすさと遊び心を考えて配置しました。
新筑波石は、阿武隈山中から産出する石ですが、質感のあるとても使い勝手のよい石だと実感しました。

 

■石積み・駐車場

施工前 施工後
飛び石 飛び石
   
 飛び石  施工後(逆方向から)
 飛び石  施工後(逆方向から)

 この庭のポイントとなる石積みには、地元阿武隈山中で産出する新筑波石を使いました。
さびた風合いを好まれるお客様のご希望に添える石が地元で手に入ったのは幸運でした。
駐車場は、ただのコンクリート打設では面白くないので、小諸石で模様をつけ、コンクリートに石積みと合わせた色をつけてあります。この着色材は、色落ちがほとんどなく、コンクリートの強度を増すという優れものです。
仕上げも通常のコンクリ仕上げのようなツルツルした感じではなく、落ち着いた風合いが出るようにしました。

施工中 施工中
石組み 石組み

 駐車場の小諸石で作った模様です。
写真左側は、羽を広げた鳥をイメージしました。
写真右側は、太陽をイメージしているのですが、人によっては花と言われたり、ストーン・サークルのようだと仰る方もいらっしゃいます。

 

■板塀・塀

施工前 施工後
 飛び石  施工後(逆方向から)

 敷地の境界には、板塀を設置しました。
支柱には、鉄骨を使用し、板材も厚さ30mm とかなり厚めのものを使っています。
これだけ厚めの板材を使うと、見た目にも安定感があり、質感も出てきます。
耐久性ももちろん高くなります。
この板材にドイツ製塗料(キシラデコール)を3回塗ってあります。

施工後 施工後
塀 塀

 隣との境界にあった既存のコンクリ壁面も庭に合わせて意匠付けをしました。
使用している石は、小諸石です。
塗りは左官屋さんの仕上げによるもので、土壁風の風合いをお願いしました。

 

 

■その他(水道栓・照明)

施工前 施工後
飛び石 飛び石

 お庭の中には、一つだけ鮫川石がありました。
  これだけ川石だったので、全体と馴染まずどうしようかと思っていたのですが、駐車場の近くに洗車用の水道栓が欲しいというご希望をいただいたときに、水道の蛇口を取り付けることを思いつきました。
  形、大きさがちょうどよかったせいもあり、見事に庭と馴染みました。
お施主様のお話では、来客の方は、この水道栓に驚かれることが多いそうです。

   
施工前 施工後
 飛び石  施工後(逆方向から)

 もともと置いてあった置き灯籠です。
笠の部分が大きくアンバランスでしたので、新筑波石の余ったものと交換し、もともとの笠は灯籠の敷石に使っています。
照明は、中に入れると昼間目立ってしまうので、後ろから照らすような形にしました。

 

 庭作りを終えて
 

もともと植物がお好きなお施主様のお宅ですから、お庭の中には色々な種類の植物が植えられていました。施工後も伺う度に何かしら花が咲いていたり、新しく草花が植えられていて、変化が楽しいお庭です。
駐車場増設のため庭の面積は3割近く削られてしまったのですが、狭くなったとは思えない、逆に広くなったような気がする、植物を植えるスペースが増えた、というありがたいご感想をいただきました。
植栽は、高木については配置する場所をきっちりと決め、中低木はバランスを見ながら植ましたが、草花については、庭いじりが大好きなお施主様ご夫婦にすべておまかせしています。また、中低木などもお施主様が自由に移動させていらっしゃいます。
私たちも植生について等のアドバイスはしますが、そこで一番多くの時間を過ごされるお施主様が楽しめるお庭というのが一番大切なことと思っております。
今回のお庭については、お庭で遊べる余地、隙間を多く作ることができたのが良かった点ではないかと思います。デッドスペースがなくなったことにより、削られた面積以上に、有効に使える面積を増やすことができたのだろうと思います。
お客様がお庭で楽しんでいらっしゃるご様子が伺うたびに分かり、私たちも楽しい気分になります。楽しめる空間作りができたことを、なにより嬉しく思います。
今回の施工の作業の様子は、ブログ「小梅の修行日記」2007年2月3月4月の記事でご覧いただけます。
最後に、旦那様から頂戴したお庭の写真を許可をいただいて掲載します。


飛び石 飛び石
園路 園路
 階段 階段
   

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14