夕焼け
去年の暮れに7tの大モミジを移植したお宅の旦那が亡くなった。 肺癌の手術中に動脈出血して急死したらしい。
このモミジは先祖から預かったものだから、なんとか生かしてやってくれ、と頼まれていた。 移植に成功し、若葉が噴き出したのを、縁側で目を細めて眺めていた。 今度は松の手入れを頼むな、と言われたのがひと月ほど前で、それが最後になってしまった。
帰り道、誰も通らない鬱蒼とした林道を上ってきた。 暗い群青の中を、ぼんやり、とろとろと走ってきた。
山が開けると大きな夕焼けだった。 まるで産道を通って生まれたみたいな夕焼けだった。 一面の水田に空が映るので、もう空の中にいるようだった。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14