美しい空間と時間 庭園管理植吉
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植木屋雑記帳

 

■違い

 植木屋のなり始め、サツキとツツジの違いが分からなかった。
 真竹と孟宗の違い、サザンカとツバキの違いが分からなかった。
 もちろん細かい違いはいくらでもある。
 初めはそれを頼りに区別していた。
 だが慣れてくると、そういう部分の違いより、全体的な雰囲気、質感で区別するようになる。
 松が松であるように、紅葉が紅葉であるように、コブシとモクレンは違い、コデマリとシモツケは違う。
 質感の違い。
 あるいは同質なものの持つ姿。
 部分でありながら全体であり、全体に開きながら個別である。
 そんな風に、見るともなしに見ていると、兄弟姉妹を見分けるように分かってくる。

 「花は紅、柳は緑」という言葉がある。
 これは、そのものの本来の有り様や姿が、作為なしに現象していることを示している。

 「バラはバラでありバラである」という言葉もある。
 これは問い募る主体が自己撞着するだけで、一本の薔薇がどこにもない。

 この二つの言葉の違いは大きい。

 そんなことをつらつらと考えながら、今日も松の手入れで一日を終えた。
 三時からひどく冷え込んだ。

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14