違い
植木屋のなり始め、サツキとツツジの違いが分からなかった。 真竹と孟宗の違い、サザンカとツバキの違いが分からなかった。 もちろん細かい違いはいくらでもある。 初めはそれを頼りに区別していた。 だが慣れてくると、そういう部分の違いより、全体的な雰囲気、質感で区別するようになる。 松が松であるように、紅葉が紅葉であるように、コブシとモクレンは違い、コデマリとシモツケは違う。 質感の違い。 あるいは同質なものの持つ姿。 部分でありながら全体であり、全体に開きながら個別である。 そんな風に、見るともなしに見ていると、兄弟姉妹を見分けるように分かってくる。
「花は紅、柳は緑」という言葉がある。 これは、そのものの本来の有り様や姿が、作為なしに現象していることを示している。
「バラはバラでありバラである」という言葉もある。 これは問い募る主体が自己撞着するだけで、一本の薔薇がどこにもない。
この二つの言葉の違いは大きい。
そんなことをつらつらと考えながら、今日も松の手入れで一日を終えた。 三時からひどく冷え込んだ。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14