移行
ヒッヒッ、とジョウビタキが鳴くようになり、モズがキーィキーィと空を裂く。 アケビの実が割れ、萩も色づいた。 雨ごとに季節は進む。
霜が降りると、植物とともに、目に見えない生き物たちが眠り、死に絶え、風景は清浄なものとなる。 移行することによる清浄。
春までに行きつ戻りつしながら、このプログラムは続くのだろう。 そうしてまた再生のプログラムに少しずつ移行し、新しいステージが始まる。
私たちはそのことを感じ、忘れながら年を重ねる。 気がつけばそんな主体もいつの間にか移行し、もう自分の時間が少ないことを知る。 祖先たちはそんな風にして墓に入った。 私たちもそうなる。
山の上から木々が燃えてくる。 ケモノたちは巣ごもりし、車道に出て轢き殺される。 落ちた木の実は食べられ、蓄えられ、忘れられて、また来る春を待つ。
いま渓流の魚たちは水底に揺らめき、魚の時間を眠っている。 神様には神様の時間がある。 私たちの生活の下地のようにいつも流れて、風景を深くしている。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14