美しい空間と時間 庭園管理植吉
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庭のあれこれ

先祖帰り・てんぐ巣病・末期の花

 カイヅカイブキなどを強く剪定すると、堅い杉葉のような枝が出ることがあります。
これは「先祖帰り」と呼ばれています。
数年間、手入れを怠ると、どうしても樹形を戻すために樹皮が褐色になった元枝部分で剪らなければならなくなります。
  カイヅカイブキなどの園芸品種は、樹皮が褐色になった元枝部分で剪ると、そのショックで原種に近い萌芽枝が出てしまうのです。
チャボヒバも緑色の若い枝の部分で剪らないと、原種であるヒノキの葉が萌芽します。
これらの庭木は緑色の若い枝の部分で手入れが出来るよう、年に一二度のこまめな管理が必要です。

 春の花見シーズン、満開のソメイヨシノの中に、もっさり葉を茂らせた枝を見つけることがあります。これは「てんぐ巣病」と呼ばれる病気の枝です。放置すると、美観を損なうだけでなく、衰弱し、枯死してしまうこともあります。
若葉が茂り出すと隠れて見分けにくくなりますが、冬から春にかけては、とてもよく目立ちます。
これは枝ごと切除して焼却処分するより手がありません。
花の咲いた後は病原菌が移りやすいので、冬の間に処理します。
冬のてんぐ巣病は、ほうきのように小枝が密集していますから、すぐに分かります。
桜は腐りやすいので、傷口にトップジンMペーストや、キニヌールなどの殺菌塗布剤を塗っておくとよいでしょう。

  ツバキやサザンカ、コブシやモクレンなど花木と呼ばれる庭木が、何の手だてもしないのに、突然旺盛に花を付けることがあります。
「今年は花つきがいい」と喜ばれる方がいらっしゃいますが、これは「末期の花」である場合があります。
自分の生命が危うくなったので、急いで子孫を残そうとして花を付けるのです。
特に、数年樹勢が悪かったのに、急に花付きが良くなった場合は、注意が必要です。
最後のエネルギーで子孫を残そうとしているのです。
すぐに花柄を取り、樹勢回復の処置をする必要があります。

 庭木も私たちと同じ生命の流れの中にいます。
「先祖帰り」は精神的ショックによる「幼児帰り」のようなものかもしれません。
「てんぐ巣病」は病原菌が原因ですが、動物の癌のようなものかもしれません。
「末期の花」は、思い詰めた母親を思わせて哀しいものがあります。

 庭木を私たちと同じ生命の流れの中に捉えると、庭木の「気持ち」も解るような気がしてきます。

 

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字寺ノ下46−1