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庭のあれこれ

樹木の鼓動を聴いたことがありますか?

  現在、世界で最も背が高い木は、アメリカ、カリフォルニアにあるセコイアで、1998年に計測した段階で樹高112mありました。
樹木は、こんな高さまでどうやって水を吸い上げるのでしょうか。
人工ポンプでこの高さまで水を引き上げるのには、かなりの性能が要求されます。

  答えの一つは、水分子の凝集力です。水の「つながる力」はかなり強く、サイホンはこの水分子の凝集力の原理を利用しています。細いチューブで水を吸えば、 あとは自動的に流れ出します。チューブに穴が開いて空気が入ると水は流れません。生け花の「水切り」は、植物が水を吸い上げる組織の導管に空気を入れない ためです。

 答えの二つ目は、葉と大気の間の水蒸気圧の差です。晴れて気温が高く湿度が低いほど、大気は水蒸気圧の高い葉から水を引っ張ります。水分子の凝集力で連結した水をストローのように大気が吸うわけです。この力は、根が水を吸収しようとする力にもなります。

 答えの三つ目は、浸透圧と毛管現象です。土壌中の水分濃度より根の細胞内の溶液濃度の方が高いので、浸透圧が働いて細胞の中に水分を取り込みます。これに植物の細い導管が毛管現象として働いて、水を上昇させます。

 以上力の総合作用で、木は水をてっぺんの葉まで引き上げるのです。
ところで、一時期、森林インストラクター達が、「木が水を吸い上げる音を聴こう」と聴診器を幹にあてて、音を聴かせることがはやりました。
木が水を吸い上げる早さは、一時間に数10cmがせいぜいと言われています。また水を通す導管は0.1oよりも細いので、聴診器では水の流れる音は聴こえません。
聴こえてくるのは、風で木が揺れる音と、木がアンテナとして拾った遠くの音だと思われます。

 

 (参考文献 堀大才・岩谷美苗 著 『図解 樹木の診断と手当』 農文協)

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字寺ノ下46−1