虹とうなじと山の色
現場へ向かう朝、大きな虹がでた。 虹は山の端から立ち上がり、半円の途中を雲に消していた。
電線に架かった桜枝の剪定をする。 生きた桜は柔らかく、艶めかしい肉質をしている。 大枝を抜くと、切断面が、女のうなじのように白い。 何かがここを通って花々を開いたのだ。 その記憶を消すように殺菌剤を塗り込めた。
今日は妙な陽気だった。 半袖でも暑いくらいだった。 明るいうちに仕事を終わらせ、ゆっくり山道を帰った。
麓はいまが紅葉の盛りだ。 ブナやナラがオレンジ色に燃えている。 これはまた何の喩(メタファー)だろう。 何かが何かに満ちている。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14