美しい空間と時間 庭園管理植吉
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植木屋雑記帳

 

■蟷螂(カマキリ)

  草刈りをしていると色々な虫が飛び出してくる。ねぐらを蹂躙して悪いなと思いながらも、手は休めない。夏のあ いだ茫々に伸びた草も、秋の斜めの陽差しの中で、静かに成長を止め朽ちようとしている。チップソーでヒマラヤスギの根元を傷つけないよう注意深く刈る。木 は表皮のすぐ下で生命維持をしているので、皮を一周めくってしまえばそれで枯れる。大木をクレーンで吊り上げている時など、幹をよく養生してから吊らない と、木肌をめくってしまう。そうなればもう駄目なのだ。

 ヒマラヤスギの幹にカマキリ がいた。逆さまに張り付いて踏ん張りながら、その鋭い両手の鎌で何かを掴んでいる。よく見るとキリギリスで、もう下腹部だけになっている。カマキリの口の 端からはキリギリスの細い足が出ていて、舐(ねぶ)るごとにくるくると回る。くるくる回しながら大きな目でこちらを見ている。キリギリスの腹はまだ動いて いる。虫の心臓は腹にあるのか。腹の断面。虫は赤い血を流さない。無言で食べられ無言で食べている。無言の野。おれを威嚇し。

 

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14